僕は座っていた。
「撮影部OK!」「照明OK!」「音声部OK!」「本番ヨーイ!スタート!」「はい、カット!」「俳優部 OK!」
「ベースチェックOK!」・・・・
ならば・・・僕もオッケー・・・と。演出は何もすることがない。勇猛果敢なスタッフと役者の呼吸の流れにまかせておけばいい。
僕は座っていた。
何もすることがなくなると、もう撮り終わったシーンの台本にらく書きをしてみたりする。
だが僕の前にはどんどん現実の絵が積み上げられていく。
僕は座っていた。
現実の絵を並べ換える時間が来た。
それは確かに「現実」だったのにもうすでに後ろに追いやられていく。そしてまた新しい「現実」の絵が目の前に顕れる。
僕は座っていた。
音が聴こえる。「現実」の音だ、と思う。
絵の中に音があり、
音の中に絵がある。
僕は何もすることがない。
現実の中に現実があり、夢の中に夢がある。
僕は座っていた。
こうして世界の中に“ひとつの窓”が出来た。
僕は座っていた。
その窓のほうに向き合って
僕は座っていた。
僕は何もすることがない。
平成10年9月27日
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